血便について
- 便に血液が付着している
- 便が全体に赤っぽい 暗赤色の便が出た
- 黒くて粘り気のあるタール便が出た
- 血液だけでなく粘液のようなものも混じっている
- 排便後、便器に血液がポタポタ落ちる
- 排便後、拭いた紙に血液が付着している
- 便潜血検査陽性
上記のようなものも血便です。普段と便の状態が異なるようでしたら、消化器内科の受診が必要です。色や状態である程度、出血している場所や可能性の高い疾患を絞り込めます。一般的に鮮やかな赤色の場合は肛門近くからの出血が疑われ、暗い色になるにしたがって肛門から遠い場所で出血している可能性が高くなります。また、黒いタール便は、食道・胃・十二指腸、のど・口腔内・鼻腔などからの出血が疑われます。出血量が多いと貧血症状などを起こすこともあり、穿孔などのリスクも高くなってしまいます。また、血便は大腸がんや前がん病変の大腸ポリープでも生じやすい症状です。血便に気付いたらできるだけ早く消化器内科を受診して原因を確かめましょう。
血便を起こす主な疾患
大腸ポリープ
大腸粘膜にできる良性の隆起性腫瘍です。硬い便が通過する場所にできると、擦れて出血することがあります。肉眼では確認できないほど微量の血液も検出できる便潜血検査陽性の場合、大腸カメラ検査を受けると30%程度に大腸ポリープが発見されると報告されています。大腸ポリープのほとんどは腺腫であり、放置していると大腸がん発症につながるため、大腸ポリープの段階で発見して切除することで将来の大腸がん予防につながります。ただし便潜血検査では進行した大腸がんが見逃されることもあります。
潰瘍性大腸炎
血便や粘液の混じった粘血便を生じることが多い疾患です。難病指定されていますが、適切な治療を続けてコントロールすることで、良い状態を長く続けることも可能です。血便以外に腹痛や下痢が続き、便の回数が増えますので、こうした症状に気付いたら早めに受診してください。
大腸憩室
憩室は腸管が袋状になっている小さなくぼみです。憩室には問題がありませんが、出血や炎症を起こすことがあり、血便や腹痛などを生じることがあります。憩室の腸壁は薄く、出血や穿孔を起こしやすいため注意が必要です。腹痛をともなわない大量の出血は憩室出血が疑われます。状態によりますが、入院が必要になることもあります。
大腸がん
大腸ポリープが放置されると時間をかけてがん化し、大腸がん発症につながります。硬い便が擦れる場所にあると出血して血便を起こすことがあり、目に見えないほど微量の血便も便潜血検査で発見できます。ただし、確定診断には大腸カメラ検査が不可欠です。血便や便潜血検査陽性以外では、便秘や下痢などの症状を起こすこともあります。ただし、早期発見には、症状のない段階で大腸カメラ検査を受けることが最も有効です。
虚血性大腸炎
腸管に栄養素や酸素を送る血管が動脈硬化などで閉塞し、腸管の血液循環が悪化して炎症や壊死を起こす疾患です。突然、腹痛、下痢、血便などの症状を起こします。腹痛後、鮮やかに赤い大量の出血を起こすこともあります。
いぼ痔
肛門内の直腸粘膜にできる内痔核は、痛みなどを起こすことが少なく、ふくらみも肛門内にあるため、排便の際の出血ではじめて気付くことがよくあります。内痔核は大量に出血することがよくあります。
切れ痔
硬い便を無理に出そうとして肛門の皮膚が切れたり裂けてしまったりしている状態で、出血量はそれほど多くありません。便秘があると切れ痔を発症しやすく、切れ痔があると排便時に強くいきむため排便を我慢して便秘を悪化させるという負のスパイラルを生じやすい傾向があります。便秘を解消しないと再発を繰り返すため、再発防止を視野に入れた治療が重要です。なお、勢いの強い下痢で切れ痔を発症することもあります。
血便とストレスについて
ストレスと血便には直接的な関係こそありませんが、ストレスで便通異常を起こすことで痔や大腸疾患などの発症・進行リスクが上がり、結果的に血便を生じることはあります。
便潜血で陽性
便潜血検査で陽性の結果が出たということは、便に目には見えないほど微量の血液が混ざっているということです。消化管のどこかから出血していますが、疾患は大腸カメラ検査などを行うことではじめて確定診断できます。陽性で精密検査を行った場合、最も発見される頻度が高いのは痔ですが、前がん病変の大腸ポリープが発見される割合も30%程度あるとされています。大腸ポリープは発見したその場で内視鏡による切除が可能です。便潜血検査陽性になった場合にはできるだけ早く消化器内科を受診してください。なお、便潜血検査では陰性でも進行している大腸がんがある場合も珍しくありませんので、陰性でも40歳を超えたら1度大腸カメラ検査を受けるようおすすめしています。
血便・便潜血陽性の場合の検査
精密検査として、大腸カメラ検査、造影剤を使った注腸X線検査、造影剤を使ってCT検査を行う大腸3DCT検査などがあります。ただし、注腸X線検査や大腸3DCT検査を行った場合も、大腸がんや大腸ポリープの確定診断には大腸カメラ検査が不可欠です。被ばくリスクや何度も検査を受けることを考えたら、最初から大腸カメラ検査を受けることが有効です。大腸カメラ検査では、大腸がんや大腸ポリープ以外の感染性腸炎、クローン病、大腸憩室症、潰瘍性大腸炎、痔などの確定診断も可能です。